◆”愛”の序章◆

愛”の始まりは、あなたが愛する人を、完全にその人自身にさせてあげることです。
あなた自身のイメージに合わせるため、その人をねじ曲げてしまうことではありません。
さもないと、それは単に、その人のうちに見つけたあなた自身の“似姿”を愛しているにすぎないことになります。
~トマス・マートン「人は独りでは生きていけない」~

【解説】 これは、人を愛するということの本質を、見事に言いえていますね。あらゆる愛の破たん―いさかい、別離は、この2節目の失敗によると言っても過言ではないでしょう。その意味で、まことの愛は、純粋に相手の人の“その人らしさ”を愛します。そしていつまでも、それを失わせることのないように、喜んで労し、犠牲をもいといません。そこにのみ、愛することの喜びがあることを知っているからです。お互いが、そのような愛をもって愛し合うとき、二人は、完全に自分自身でありながら、愛する相手のうちに本当の安らぎを覚える自分を見いだすのです。それは、優れて三位一体の神―父、子、み霊のうちに見いだされるものであり、「父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛しました。わたしの愛の中にとどまりなさい。」(ヨハネ15:9)と言われ、私たち一人一人を、かけがえのない“個”として愛された主イエスの愛そのものでもあります。私たちの不完全な愛は、この神様の愛の“型”としてあろうとするときに、生涯をかけて、限りなく完成に近づくものとなるでしょう。その意味で、このマートンの言葉は、“愛”の序章(プロローグ)であり、終章(エピローグ)なのです。

 

The beginning of love is to let those we love be perfectly themselves, and not to twist them to fit our own image. Otherwise we love only the reflection of ourselves we find in them.
-Thomas Merton: No Man Is an Island-