普段の生活の中で、私たちはほとんど気づいていない。
―私たちは、与えているものよりも、はるかに多くのものを与えられていることを。
―そして、人生が豊かになるのは、感謝の心を持って生きるときだけなのだということを。
~ディートリッヒ・ボンヘッファー~
【解説】 再びボンヘッファーです。このような彼の言葉を読むと、私はあの獄中のパウロの言葉を思い出します。
(ピリピ 4:11-13) 「乏しいからこう言うのではありません。私は、どんな境遇にあっても満ち足りることを学びました。私は、貧しさの中にいる道も知っており、豊かさの中にいる道も知っています。また、飽くことにも飢えることにも、富むことにも乏しいことにも、あらゆる境遇に対処する秘訣を心得ています。私は、私を強くしてくださる方によって、どんなことでもできるのです。」
パウロにとっては、あの冷たい獄屋が、キリストと共なる天国でした。ボンヘッファーにとっても、あの悪名高いプリンツ・アルブレヒト通り(ゲシュタポ本部があった)のフロッセンビュルク強制収容所の独房の2年間は、余人が長い生涯をかけて究めてゆく福音神学を、日々のキリストとの生ける交わりの中で、このわずかの年月に凝縮させて、完成の域に深めていった、“地上の天国”だったのではないでしょうか。
私は改めて、文字どおり“普通の人”である私たちが、何十年もの要らざる葛藤と苦しみの果てにやっとつかめるかもしれないこの人生の真理を、彼のペンによって残させてくださり、死後半世紀上たった今も、私たちを括目させてくださる主に、熱い感動をもって感謝をささげる者の一人です。
In ordinary life
we hardly realize
that we receive a great deal
more than we give,
and that it is only
with gratitude that life
becomes rich.
~DIETRICH BONHOEFFER~
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