◆④大草原の小さな失態

 

●脚本家より一言: 今度は、このイタリアの大草原の中の山小屋の写真を紹介して、「これはイタリアの『大草原の小さな家』ですね』とコメントしたところ、またもや迷優マッキーが、ここを舞台にチャールズをやりたいと言い出しました。しかも今度は、いつも三枚目ばかりなので、二大名作西部劇の「シェーン」のアラン・ラッドと、「荒野の決闘」のワイアット・アープを演じたヘンリー・フォンダのキャラにしてくれというのです。この人は昔から、ちょっと空想を始めると、白馬を担いだ王子様とか(注・重くて白馬がつぶれるので、乗れないのです)、自分がヒーローになった気になるという困った癖があります。さすがに私も、そりゃムリだと思いましたが、盟友ですので、なんとかムリにムリをして願いをかなえてやることにしました。また、このところちょっとアルツの気があるのですが、それもキャラとして生かしました。

 

 

 

時: 19世紀末

 

ところ: イタリアの田舎(マコロニウェスタンの舞台)

 

配役: 

 

ワイアット・シェーン・チャールズ・インガルス(マッキー・コンノ)

 

妻クレメンタイン・インガルス(フジコ・フジキ)

 

ジョーイ・インガルス(フミエ・コイズミ)

 

 

 

マッキー・インガルス「じゃあ母さん、東部の町まで行ってくるよ。少し長旅になるけど、留守をしっかり頼む。」

 

クレメンタイン「お気をつけて。くれぐれも、私がいないからって、バカ食いしないでね。」

 

マッキー「分かってる。俺ももう若くはないから、無茶はしないさ。お前の名が好きだよ。…名前、なんだっけ?」

 

クレメンタイン「あら、お忘れになったの? クレメンタインよ。(モノローグ)毎朝、同じことを言ってるわ。」

 

マッキー「クレメンタインか。いい名だ。」(注:「荒野の決闘」のラストシーン、ワイアット・アープの名セリフです。動画参照)

 

(マッキー、愛馬トシナンデにまたがって、静かに去っていく。この馬の名は、マッキーの注文で、「ドンキホーテ」の愛馬ルシナンテにあやかって付けたもの。彼も、自分の誇大妄想的性格は自覚している。)

 

そのはるか後ろから――。

 

ジョーイ(注:髪を短く切って「シェーン」の少年に扮装)「パパ~~! カムバ~~~~ック!」

 

(シェーン・マッキー、馬上から振り返る。その途端、愛馬トシナンデ、どーと崩れ、マッキー、地面に投げ出される。)

 

マッキー(モノローグ)「ああ、やっぱり重すぎたか…。道は遠いが、しょうがない、担ぐとするか…。」

 

ナレーション: すると不思議、このロバは、じゃなかった、馬は、初めて口をきいたのです!

 

トシナンデ「旦那に担いでもらってすんません。何せあたしも、旦那と同じ、もうトシナンデ。」

 

ラストシーン: 大草原に夕日が沈む。マッキー、トシナンデを担ぎ、「まさか妻たちは見ていまいな」と時々振り返りながら、一歩一歩、歩いていく。その姿が次第に黒い小さなシルエットとなる。哀愁を帯びたBGM(マカロニウェスタンのエンリオ・モリコーネ風)、次第に消えて――。

 

THE END