◆③珍説 ロミオとジュリエット(後編) 

 

●脚本家より一言: ところが、前編を公開したところが、熱烈なマッキーファンの女性たちが、コメントで様々なグッズの差し入れをして、必死でロミオの願いに応えて減量しようとするマッキーを応援しだしたのです。これをうっかり無視したら、彼女たちのリベンジが怖いと判断しまして、急きょ、後編を制作することにいたしました。

 

時と所は同じです。

 

配役: ロミオ(マッキー・コンノ)

 

     女たち①(ノリコ・シオザワ)

 

     女たち②(フジコ・フジキ)

 

     マッキーの奥様(ご本人)

 

 

 

ナレーション:愛するジュリエットに悲しい別れを告げられたマッキー・ロミオは、ひそかにある決心をしました。

 

ロミオ「(モノローグ)ああ、ジュリエット…。よし、僕はどうなってもいい。彼女の願いに最後まで応えよう!」

 

ナレーション: こうしてロミオは、麓を目指して、ドタドタと走り出したのです。

 

ロミオ「フー…ヒー…。よし、ここまで下ったら、今度は登りだ。ジュリエット、待っててくれ!」

 

ナレーション: 1往復、2往復…、でも、もうロミオの体は、限界でした。心臓はバクバクし、汗もとっくに出尽くし、足はと言えば、でこぼこ道で痛くてもう一歩も進めません。とそこへ、彼についてきた追っかけの女性たち2人が駆け寄りました。

 

女①「ロミオ様、どうぞお水を。そしてこの携帯用酸素も。」

 

女②「ロミオ様、どうぞ運動靴にお代えになって。」

 

ロミオ「(少し元気づき)ああ、ありがとう。(モノローグ)16世紀には運動靴も携帯酸素もないはずだけど、ま、いっか。(2人に)女たちよ、私のために泣いてはいけない。(モノローグ)ちょっと恐れ多いけど、ゴルゴタに向かわれた時のイエス様の気分だよ。(2人に)よし、最後の1回だ。行ってくる。僕に万一のことがあったら、後を頼む。(ヨタヨタ走り出す)…フー ヒー フー……ヒー……、ダメだぁ!」(ばたりと倒れる。)

 

ナレーション: それが限界でした。マッキー・ロミオは、本当に“末期ー”になってしまったのです。彼は、2人の女たちに抱えられて、最後の息を振り絞って、こう言いました。

 

ロミオ「お城に行って、ジュリエットに伝えてくれ。『私は、君の言うとおりに頑張った。そして、君の名を呼びながら死んでいった』と。」

 

女の一人、少しは身軽な方が、一目散にお城に駈けていき、ジュリエットに彼の最期を伝えました。

 

ジュリエット「まぁ…。(泣きながら)あの太った体じゃとてもムリなのに、本当に走るなんて。私を本当に愛してくださっていたのね。ああ、ロミオ、ロミオ、私、もう一生結婚はしないわ。そして、天国で彼と結ばれるわ!」

 

ナレーション: …と、ここでロミオことマッキーは目が覚めました。目の前には彼が世界中の誰よりも恐れ敬うオオカミサマが…。

 

マッキー「ああ、ジュリエット、…じゃない、僕の奥さん。」

 

奥様「なに寝ぼけたこと言ってんの。ほらもう起きないと会社遅れるわよ!」

 

ナレーション: マッキーは、心の中で「生きててよかったぁ」と思いました。そして、死ぬ思いをして痩せた分を、今日中にバリバリ食べて取り戻すぞ、と心に誓ったのでした。それが夢の話で、体重は相変わらず太ったままなのも忘れて――。(おしまい)